1月30日、全豪オープン(オーストラリア/メルボルン、ハード)男子シングルス決勝。
第1シードで世界ランク1位のN・ジョコビッチ(セルビア)が第2シードで同2位のA・マレー(英国)を6-1, 7-5, 7-6 (7-3)のストレートで制し、2連覇達成と同時にR・エマーソン(オーストラリア)の歴代最多6度に並ぶ優勝、そして、タイトル獲得はキャリア通算61勝目、グランドスラムでは11度目の優勝となった。
試合は、スタートからジョコビッチがマレーのサービスゲームで2度ブレークし、一気にゲームカウント4-0とリードして試合の主導権を握り、ストローク戦でもマレーを圧倒。1度もブレークを許さず、自身は2度のブレークに成功してわずか30分でこのセットを先取する。まるで錦織、フェデラー戦の第1セットの再現のような強さを見せる。
第2セット、調子を上げてきたマレーと高レベルの激しいラリー戦を展開、一進一退の攻防を繰り広げ第7・第8ゲームで両者ブレーク合戦。しかし、第11ゲームで36本のラリー戦を制したジョコビッチがブレークチャンスをものにし、2セットアップとなる。
マレーは、強烈なエース級のサービスもジョコビッチに返球され、攻撃が思うようにいかないイライラを見せる。
第3セット、第1ゲームでジョコビッチが先にブレークに成功するが、マレーが踏ん張り第6ゲームでブレークバックをしてタイブレークに突入する。しかし、タイブレークでは1段ギアを上げたジョコビッチが、マレーの痛恨のダブルフォルト2本もあり、最後はセンターへのサービスエースで決めたジョコビッチが優勝を手にした。
ジョコビッチとマレーの頂上決戦は、昨年の決勝と同カードで今回が31度目の対戦。全豪オープン決勝だけでも4度目の対戦で、対戦成績を21勝9敗とした。
そして、ジョコビッチは、R・エマーソン(オーストラリア)が持つ全豪オープン最多優勝の6度に並び、グランドスラムでの11度目のタイトルを獲得。グランドスラム優勝回数では、R・レーバー(オーストラリア)、B・ボルグ(スウェーデン)と並び歴代5位タイの記録を持つことになった。
ジョコビッチは、優勝後のインタビューで
「タフな試合だったし、幸運だった。最高の友人でもあり、テニスというスポーツへ多大な情熱を持っている選手。彼はこれからの将来、きっとチャンスに巡り会うのは確実だと思う。」とマレーを称賛した。
一方、準優勝に終わったA・マレーは、試合後の記者会見後、約1時間半後に出発する飛行機に乗るために足早に空港へと向い、イギリスで出産を控えて待つ妻の元へメルボルンを旅立っていった。
マレーは会見で「今日の結果に関わらず、この2週間は厳しいものだった。今はただ母国へ帰りたい。」と、素直な気持ちを語った。
それほど、今回の全豪オープンは厳しい状況だったに違いない。
マレーの妻であるキム・シアーズは、2月上旬に第一子を出産する予定で、そのためマレーは大会開始前に、それが決勝戦あれ、出産が始まったら、棄権をしてでもイギリスへ帰る気持ちでいることを明かし、話題となっていた。
妻の出産が気掛かりながら3回戦へ臨んでいたマレーに、更なる不安要素が飛び込んできた。ロッド・レーバー・アリーナで行われていたA・イバノビッチ(セルビア)の試合に彼女のコーチをしていたマレーの妻の父であるN・シアーズが観戦中に倒れ病院へ搬送されるアクシデントに見舞われた。
マレーは、そんな試合に集中できない中でも第2シードの責任と意地で順当な勝ち上がりを見せ、宿敵ジョコビッチとの頂上決戦を迎えた。
そして、またしても優勝トロフィーを目前にして掴むことなく、夏らしくないメルボルンを去ることになった。しかし、マレーは母国へ帰り、トロフィーよりも大切なものを手にし、一人増えた家族と共に、再び王者ジョコビッチの前に挑戦者として対峙するのはそう遠くはないはずである。
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