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気まぐれな雨と光と陰、そして新しい風。(2016 全仏オープン)

気まぐれな雨と光と陰、そして新しい風。(2016 全仏オープン)



絶対王者のN・ジョコビッチは初優勝と生涯グランドスラムという栄光を太陽の光を受けるか如く赤土に大の字となり、一身に浴びることができた。
そして、対照的に敗者となったA・マレーは、目を赤くし、なかば放心状態でコートサイドのチェアに座り込んでいた。1935年のF・ペリー以来のイギリス人チャンピオンを狙っていたマレーだったが、またしても大きな壁を超えることはできなかった。第1セットは自分のテニスをして先取したが、平静を取り戻したジョコビッチに主導権を握られると、3-6, 6-1, 6-2, 6-4で敗者となった。

ビッグ4といわれているA・マレーであるが、グランドスラムではビッグ3に行く手を阻まれてきた。
全豪オープン4度と今回の全仏オープンを加えた5度はジョコビッチに、2008年の全米オープンと2010年の全豪オープン、そして2012年のウィンブルドンと3度とフェデラーの前に優勝を阻まれた。加えてナダルには、5度準決勝で敗れている。

マレーは会見で「明らかにこの数年間の彼等は、自分にとってとても難しい状況を作ってきた存在だった。グランドスラム優勝まであと少しという状況は何度も訪れていた。しかし、残念ながらその全てが自分ではなく彼等の手に入っていった。」と辛い心情を語った。
12歳からのライバルが生涯グランドスラムという栄光に輝いているのを目の前にして、胸中のざわめきは想像にあまりある。

「きっとその壁を崩すにはあと数年かかるだろう。テニス人生を終わりにする頃には、きっともっと自分が成し得たことを誇りに思えるだろう。彼等を倒さずにはグランドスラムの優勝はあり得ないだろうから。」とマレーは、次なるジョコビッチに対して、消え失せていない闘志を覗かせていた。

次なるステージはテニスの聖地、ウィンブルドン。この舞台でA・マレーは大きな声援に背中を押され、さらに一段高いレベルでジョコビッチと戦える、一番近い存在であることを知っている。

女子シングルスの方でも光と陰が交錯した。前年度チャンピオンで第1シードのS・ウィリアムズ(アメリカ)は第4シードのG・ムグルサ(スペイン)の前に5-7, 4-6のストレートで敗れ、大会2連覇を阻まれた。
35歳のセレナが優勝すれば、オープン化以降のグランドスラム最多優勝記録であるS・グラフ(ドイツ)が持つ22回に並ぶはずだったが、22歳の若いムグルサにそれを阻まれた。しかも、自身のフイールドであるパワーテニスでの敗北である。セレナは4度のマッチポイントをしのいでいたが、最後にムグルサの放ったロブを見送り、ベースラインにポトリと落ちて決まったのは印象的であった。

勝敗を分けたポイントはと聞かれたセレナは、「1ポイントの差で彼女が第1セットを先取した。それが示すように、大切なポイントをどう勝ち取るか、それを今日は彼女がしていた。」と試合を振り返り、太ももの怪我や疲労などと、敗戦の言い訳をせずに、潔くこの敗戦を受け入れた。しかし、それは涙声となって心の一面を覗かせていた。

セレナの1強時代から、混沌としていた女子テニス界の新たな時代の幕開け、そんな予感と期待を抱かせる決勝だったかもしれない。

勝者がいれば、必ず敗者がいる。それもスポーツ競技の常理でもあるが、戦わずにして、あるいは途中で陰となったプレイヤーもいた。

全仏が終わるのを待って、ITF(国際テニス連盟)は6月8日、ドーピング検査の陽性反応により出場停止となっていた女子テニスで世界ランク26位のM・シャラポワ(ロシア)に、2年間の出場停止処分を下したと発表した。これまで女子テニスを引っ張ってきたスター選手にはつらい処分であった。

第3シードで出場予定であったR・フェデラーは大会前に欠場を表明していたが、第4シードで全仏オープン9度の優勝を誇るクレー・キングのR・ナダルは3回戦を前に左手首負傷のため、棄権し、赤土から去っていった。この全仏での活躍が期待されたJ・Wツォンガも肉離れで3回戦途中でリタイア。

そして、ローラン・ギャロスの気まぐれな雨は多くの選手を悩ました。
好調を維持していた錦織圭も、雨による中断の後、水を吸ってすぐに重くなるボールにフィーリングが合わず、最近では2連勝していた対戦相手のR・ガスケに後塵を拝した。
世界ランク2位で第2シードのA・ラドワンスカ(ポーランド)も世界ランク102位のT・ピロンコバ(ブルガリア)にゲーム再開後に10ゲーム連続で落とし、6-2, 3-6, 3-6で逆転負けを喫した。

しかし、急転する天候やコンディションの中、新しい風は吹き始めていた。
第13シードのD・ティエム(オーストリア)と第12シードのD・ゴファン(ベルギー)である。両者の潰し合いになった戦いはティエムが4-6, 7-6 (9-7), 6-4, 6-1の逆転勝利で、グランドスラム初の準決勝進出を決めた。

ティエムは、昨シーズンに3大会で優勝を飾り大きく飛躍。今シーズンは既に3大会でタイトルを獲得する活躍で、世界ランキングでは現在15位。大会終了後の世界ランキングは自身初のトップ10入りが濃厚となり、錦織の次世代のライバルに筆頭になる可能性は十分。

一方、敗れたゴファンもグランドスラム初のベスト8進出を果たした。今シーズンはマスターズ大会で2度のベスト4進出を果たすなど、彼自身の躍進のシーズンとした。

ビッグ4の足並みが崩れ、錦織圭にも大きなチャンスがめぐってきたが、気まぐれすぎる雨に大きく影響されて夢は流された。
そして、錦織圭の次世代の足音が近くに聞こえてきている。

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